深窓の令嬢

2021年 10月 11日 この言葉は今や死語なのかもしれない。 深窓の令嬢

18歳の時に短大の学生課の紹介で春休みに霞が関の中央官庁で短いアルバイトをした。

同じテーブルの真向かいに座った女子学生は他の大学の方だった。

約半世紀を経ても忘れられない思い出。

この方は、友好的でも非友好的でもないが、不思議な方だった。

とても単純な作業で、時折短い会話をした。 

成城にお住まいのサガラさんと言う女性だった。

私をなによりも驚かせたのは、彼女の会話に頻繁に出る、「サガラ家では・・・」という言葉。

私は、今まで生きてきても、さらに言えば、未来永劫、そんな言葉を口にすることは無いので、正直びっくりした。

良い所のお嬢様に違いない。


さて、短いアルバイト期間の中間を過ぎたあたり、突然、彼女が私に聞いた。

アルバイトが終わって、残りの春休みに何をするのか?

私は、鎌倉へ行く予定と答えた。 その会話はその場で終わった。

さて、アルバイト終了日のこと。 鎌倉、ご一緒できないかしら?


別に構いませんが、どうやって連絡とりましょう? 電話番号頂けますか?

言っとくけど、当時は携帯なんて無い時代である。

彼女は言下に、「サガラ家では、他人に電話番号を教えたりしません」。


そうですか、それでは今決めてしまいましょう。 ○月✕日 〇時に鎌倉駅改札で。

念のため、都合がつかない場合は、私の自宅に電話をくださいと言って、電話番号を渡した。

今思えば、若さゆえか、なんて私は心が広かったのだろうと思う。

今だったら、そんな奴御免だ! めんどくせえ!



う~ん、正直、本当に来るんだろうかと思っていたが、現れた。

私は私の計画で鎌倉の寺を周り、写真を撮った。ついでに言うが、当時はフィルムカメラ。

一応、社交辞令で、写真を撮りましょうかと、聞いたら、

「サガラ家では、簡単に写真などとらせません」 はい、わかりました。


食事をしたとか、お茶を飲んだとかの記憶は残っていない。

ただ、最後の参観場所で、彼女が、「1枚写真を撮ってもらおうかしら?」

写真を1枚撮りました。 で、別れ際に聞いた。

あのう、このお写真、綺麗に撮れていたら、どうしたらよろしいですか?

彼女はためらった後、住所のメモを渡してくれた。

綺麗に写った写真をメモの住所に送ったが、礼状もなくそれっきり。

今日の空IMG_7861.JPG

別に何も思っていない。 所詮、住む世界が違うのだ。

30歳を過ぎたあたり、ふっと思い出して、この話を母にしたら、

そういえば、サガラっていう伯爵家だったか公爵家だったかがあったような気がする。

へええ・・・

木立となった隣家のコスモスIMG_7853.JPG


公候伯子男 偉い順。 公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。

記憶しなければいけないことは、しばしば忘れるくせに、なぜか、こんな役にも立たない雑学をいつまでも覚えている私。


今日は電車に乗ったわけでもないが、忙しなかった。 

午後は暑くて、ひどい汗をかいて、なんだか疲れた気がした。




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